「昆孫請け」って知ってますか? 商流子孫(造語)ごとの正直な感想を紹介
この記事はいわゆるクリエイティブ業界の「商流」について書いています。 商流の説明については、おそらくここを読んでいる方は知っているので省きますね。 また、筆者の経歴上古い時代の話なのでご了承ください。
商流子孫コンプリート
たまたまですが、筆者はほぼ全部の商流子孫(多分こんな言葉はないけど、必要なので造ってみました)を経験したことがあるので、それぞれの商流子孫ごとの違いを記していって、最後に問題提起をして格好よく締めようと思います。
といっても、全体的には主観的なただの感想なので、あまり真剣に考えないで、ヘぇ〜大変だねぇ。くらいに思ってもらえると幸いです。
筆者の立場の説明
15年くらいクリエイティブ業界で名もなきクリエイターとして過ごしてきていまして、ビジュアルデザインやWebデザインやシステム開発やら何でも好き嫌いなく頂いてきまして、経験だけはいっぱいあるおじさん。と思ってください。
色々な会社の様々な立場でクリエイティブ系仕事をしたことがあるので、業界の悪いところや悪いところをいっぱい知っています!と言うキャラでございます。
商流子孫の種類はこちら
- 自社制作---0次請け
- 子請け(直受け)---1次請け
- 孫請け---2次請け
- 曽孫(ひまご)請け---3次請け
- 玄孫(やしゃご)請け---4次請け
- 来孫(らいそん)請け---5次請け
- 昆孫(こんそん)請け---6次請け
来孫請けや昆孫請けなんてのも聞いたことはないでしょうが、名前がついていないだけで割と存在はしています。0次請けは便宜上命名しました。数学的でいいかなと。 この0次~6次請けまでの全てで、筆者には主体的な経験があるので、感想を言う権利くらいならあるというわけです。
商流子孫ごとの感想はこちら
先に結論を言うと、
- 自社制作は、心が折れがち
- 子請け(直受け)は、心が折れたり、折れなかったり
- 孫請けは、心が折れる
- 曽孫(ひまご)請けは、心が折れる
- 玄孫(やしゃご)請けは、心が折れる
- 来孫(らいそん)請けは、心が折れている
- 昆孫(こんそん)請けは、逆に楽しい
です!!
この内訳に興味のある方は、続きを読んでみてください。
役に立ちませんよ!!
自社制作だけ、少し例外
自社制作とは?
自社制作=0次請け。要は自分の会社で必要なクリエイティブは自分で作っている状態ですね。いわゆる事業会社というか、自前のサービスを提供している系だったら普通の状態ですね。ITベンチャーはほぼコレなので、皆様の中にも多いのかもしれません。特に近年は「デザイナーといえばUI・UXのデザイナー」みたいな感じもあるので、その場合はこの形態以外経験したことのない人の方が多いのかもしれませんね。
自社制作の感想
「飽きる」これに尽きますね。 もうすでに軌道に乗っているサービスの場合は、完全に官僚制になっていることが多いので、 お仕事としてはすごくいいのですが、クリエイターとしては刺激が少なすぎてとにかく飽きます。 すごく贅沢な話なのはわかっているのですが、案外飽きには耐えられないもので、例え報酬が良くても辞めがちです。(筆者の場合) また、そこまでちゃんと成熟してない会社の場合は、数値が下がったら罵倒されたりとかそれなりのブラックあるあるが蔓延しているので、 それはそれで飽きる以前の問題だったりします。 逆にいえば、矜持がある職人肌のデザイナーには向いているのかもしれません。 目に見える変化は小さいけれど、確実に前進していくのを好むタイプ。 そういういぶし銀なクリエイティブのあり方もカッコいいと思うので、 良い悪いではなく、これに関しては本当に好みですね。
案件は「広告系」
自社制作は商流子孫話の例外なので、ここからが本題です。
この世には色々な案件が存在しますが、話を分かりやすくするために、この記事においての案件とは「マルチメディア展開する広告代理店主体の何かのキャンペーン」ということにします。
例えば、新商品のアイスが大手乳製品メーカーから発売された場合に、
- CMのキャラクター(たいていは旬のタレント)が起用される
- そのキャラクターでTVCMが流れる
- その商品の公式Webサイトができる
- SNSでプレゼントキャンペーンとかする
- 雑誌とかWebとかでも宣伝が流れる
- 店頭のPOPも連動する
みたいなやつのことです。
この場合は、クライアント(依頼主)は大手乳製品メーカー。
子請けは広告代理店となります。
(「この場合」としれっと言いましたが、日本においては「大手の仕事は広告代理店以外は請けられない」ので、この場合もあの場合もないのですが、この話はなんか大変そうなのでやめときます)
それでは、早速商流子孫ごとの感想を見てみましょう!
子請け(直請け)の感想
ということで子請け=広告代理店の位置ですね。
感想は「心が折れたり、折れなかったり」です。
※厳密には筆者は広告代理店に所属したことは一回もありませんが、話もややこしくなるし、本質的なことでもないので諸々割愛します。とにかく経験があるということで。
子孫がいない場合は、普通の仕事っぽい
直請けかつ自社で一通り作れる状態ですね。
クライアントの話を直接聞いて、作って、直接渡す。
広告媒体とのやりとりも自社か自社に近いところで行う。
クリエイター本来の仕事という感じです。
筆者は自分で作れるタイプだったので、このケースだとあまり苦労はなく、思い出は無しです。
ただ、業界全体で見ると直請直作りは多分レアケースです。
すごく当たり前ですが、成功も失敗も直撃するので、 心は折れたり折れなかったりします。 要は普通の仕事。って感じです。
子孫がいる場合は、大変さで心が折れる
耳から血が出ます。
孫に頼むということは、自分の所属してる組織(子)ではできない領域があるという状態です。というか、できないことがほとんどです。
なので、特定の技能に特化した会社に依頼しなくてはいけません。
しかも、その手の案件の場合は大抵関係者が多くなるので、
筆者の過去の例ですが
- タレント事務所Aのマネージャー
- タレント事務所Bのマネージャー
- 何かの謎の委員会の人
- 孫のWeb制作会社
- 孫のクリエイティブ系?制作会社
- 謎のフランス人?のフォトグラファー
- スタイリストを仕切っている謎の人
- 自分の会社の上司
- 自分の会社の部下
- 自分の会社の微妙に他部署のクリエイティブ部
- クライアントの偉い人
- クライアントの担当者
- クライアントの法務
- 謎のスピリチュアルな関係者(いまだに正体不明)
に連絡をとらなくてはいけませんでした。
あんまり苦労自慢はしたくないですが、この例の場合は「調整」が仕事時間の150%を占めることになりました。
50%はプライベート時間に食い込んだ分です。毎晩26時に帰宅して、朝7時に出社するようになります。
そして、勤務中はずーっと携帯電話で話しているので、耳の皮膚からは血が出るというわけです。
クリエイティブとは?
そんな状態でも、肩書きはクリエイティブディレクターだった気がします。
だとすると、クリエイティブディレクターの仕事は
- 電話する
- メールする
- 打ち合わせする
- スケジュールを管理する
- 部下の文句を徹夜で聞く
- お詫びのお菓子を買う
- クライアントに謝る
- 下請けに謝る
- 自分の家族に謝る
という感じです。
これは、筆者が専門学校で教わった「クリエイティブディレクター」とは違いすぎる…ということで、心が折れました。
念押ししますが「個人の感想」ですからね! あくまで極端な例です。 もちろん「お前の仕事が下手で効率悪いだけじゃん」って言われたら、 それまでなので、そこら辺はご了承くださいね。
孫請けの感想
そこそこできる制作会社。
広告代理店から信頼されていたり、グループ会社だったり。そんな少し「強め」の制作会社です。
先ほどの案件で言うと孫の位置のWeb制作会社に当たります。
感想は「心が折れる」です。
※厳密には子と孫の間に、子の子会社の制作会社(つまり子と孫の中間)も契約上いたりすることもあるのですが、ややこしいので省きます。
子孫がいない場合は、どっちつかずで心が折れる
孫の立場だと、クライアントは子請けの会社となります。大抵は子が企画の骨子を作っています。例えば、どのタレントを使って、どういうクリエイティブの方向性で、どの媒体でいくらの予算でどうする?とかは全て決まっているので、タレントの撮影をすることくらいからが仕事になります。
撮影のテイストとか場所とかも提案できそうでできなかったりするので(大元クライアントの担当者が行きたい場所になるかも)クリエイティブは全部任せるよ!とかは子から言われるのですが、案外、というか全然アイデアを考えれそうで考えられないというか、提案させといて絶対却下されるというか、創造性を活かしたいけど、ああ頑張るだけ無駄だなぁ感が出るというか、とにかくクリエイティブにブレーキがかかります。かといって逆に「言われたことを淡々とこなす職人モード」になりたくても、ギリギリ微妙にそうはさせてくれないという案件の依頼内容だったりするので、結局はクリエイターと職人社会人のどっちにもなりきれずに、心がポキっと折れます。
子孫がいる場合は、飽きるし大変で心が折れる
撮影とかイラストとか、とにかく案件のキーとなるビジュアルまでは自社で作って、実際のWebやら動画やら印刷物やらはいくつかの子孫(ひ孫)に発注するケースです。具体的には、写真素材とかをいくつか渡したらあとはディレクション(制作進行管理)に専念するということになります。
つまり、先ほどの例で心が折れている状態に加えて、「納品完了までずっと胃が痛い」になります。
特に広告系は期日が絶対です。間に合わなかったら制裁も普通にあったりするので、期日を破ることは厳禁なのです。
なのに、期日に間に合うかどうかは他社・他者次第。できることといえば急かすことくらい。
よく言われるのが「実家の電話番号は抑えとけ」
つまり、下請けのスタッフが「とんで」しまい、携帯が繋がらなくなったら、その家族に連絡しろ。
とか言われてましたね。(今の時代じゃ確実にアウトですね)
心だけでなく、体もおかしくなります。
そういえば、あの会社みんな医者に通ってたなぁ。
曽孫(ひまご)請けの感想
有名ではない普通の制作会社の位置。
クライアントが制作会社な制作会社です。
感想は「心が折れる」です。
デザインというか、デザイン部品組み立て係
クライアントの制作会社(孫)が、「クリエイティビティを活かせないので、実績にならなくて地味で辛そうだけど請けちゃったどうしよう」的な案件は多かったりします。
誰かがやらなくてはいけない。でも誰も面倒でやりたくない。そんな案件を中心に数をこなすという立ち位置。
なのですが、実際のクリエイティブ市場で一番稼働しているのは、実質ここの位置の制作会社かもしれないです。
数としては一番かもですね。
タレント写真とか、ロゴとか、色とか、文言とか、とにかくほぼ全ての「決定済み」の要素を期日までに組み立てていくという仕事がメインです。クリエイティブと言いつつ、実質「提供素材配置業」みたいな。
まぁ、そういう作業が好きな職人的なデザイナーも少なくないので、この案件そのものが絶対駄目とも思わないのですが、実はそれ以外の観点の問題がありまして
安くて実績にならない
上に2社いるのでそもそも値段が安い(マージンをかなり抜かれる) 伝言ゲームが大変。タレント写真とかの素材待ちがあるから、制作期間が短く納期も大変。というのは分かりきっているのですが、それ以上に実績にならないのが心が折れるポイントです。 ひ孫は遂行した案件を自社の実績として公開できません。 大抵そういう契約を結ばされます。守秘義務というやつの中に、どの会社が実際の作業を遂行したかを公開してはいけない。という項目があったりするのです。(契約書がない場合も多く、その場合はそういうもんだの慣例空気を出されます) 自社の実績として堂々と公開できるのは、子。せいぜい孫くらいまでです。まぁ、みんなこっそり対面営業の際は実績として見せるでしょうが、会社のWebサイトなどには掲載できなかったりするので、金額も安くて現場も大変で、さらには実績にもならないという中々の苦しみだったりしますね。
玄孫(やしゃご)請けの感想
さらに小さい制作会社かフリーランスの位置。
感想は「心が折れる」です。
案件の全体像が分からない
間に3社入っているので、地球と火星の間の交信のようにレスポンスが悪く、提出したものに対する戻しが忘れた頃にやってくる。しかも突然戻ってきた時には、明日までに修正してください。出来なければもう二度と仕事を依頼しません。的な場合もチラホラ。
当然、金額的に利益を出すのが難しいので、少し人数のいる制作会社の場合は、資金繰り的な売り上げ目的として請けることもあるとかないとか。あるとか。案件を遂行する現場のデザイナーとしては、自分が何をやっているのか、それがいつリリースされるのか、それで誰が得をするのか、何の意味があるのか、何もかもが霧中でやっている事も多い。体感としてはなんかやたらと急かされる印象で、早めに心が折れる。
丸投げキャッチャー
ひ孫くらいまでは、いわゆる「丸投げ」をすることがあるので、その際に実際に手を動かす会社の位置なので、丸投げキャッチャーの立ち位置とも言える。 丸投げの問題点はいちいち書かなくてもいいと思いますので割愛します。
丸投げ(まるなげ)とは、土木建設業界で、発注者から仕事を請け負った元受けが、下請から手数料などを取って仕事をそっくり譲ること。あるいは、本来なら担当すべき業務をそっくり他人に任せること
(ウイキペディアより)
来孫(らいそん)請けの感想
玄孫(やしゃご)と同じくらいの位置の役割違い。
例えば、
Webデザインの場合は、Webデザインは玄孫。コーディングは来孫。
印刷系の場合は、デザイン(レイアウト)作成は玄孫。使用するイラスト制作は来孫。
というような感じ。
丸投げ案件の際に玄孫くらいとセットで発生する。
お気づきの通り「本来は子と孫で行うべき作業をそっくりそのまま予算をごっそり抜かれた状態で遂行する」役割。
感想は「心が折れている」です。
蝿の方が自尊心がある
なんというか、心は最初から折れているスタート。
この世の不条理というか、自分がすごく惨めで無様で弱い存在で、大きな仕組みや大企業には到底太刀打ち出来ないということを、たっぷりと思い知りたい人にはおすすめ。
玄孫とは仲間感
玄孫の会社がクライアントではあるが、ここまで来ると依頼主と下請けというよりかは、一緒に底辺で戦う仲間という感じになるので、案外コミュニケーションとか予算の配分はうまくやれたりする。
利益を出したり、クリエイティブ的な意味での達成感を感じるのは不可能なので、納品後に飲みにいくのだけが唯一の楽しみ。
昆孫(こんそん)請けの感想
主にフリーランスの位置。
丸投げ案件が、さらに炎上しつつある時に参上。
もはや実際に誰が何をどこでやっているのかが、誰にも不明な状態。
俗に言う「火消し案件」
都内の地下室に、素性を知らないクリエイター同士が数人集められて、謎の作業を黙々とさせられたりする、クリエイティブ業界の最深部。
感想は「逆に楽しい」です。
もはや責任感を感じることはない
来孫が、赤字覚悟で依頼していることもあったり(納品できないと制裁あったりするので)前述の謎の地下室の件とか、もはや通常の案件とはいえない状態なので、責任感を持とうという気が最初から起きません。
そして、仕事の辛さは責任感に比例するので、辛くはない案件ではあります。辛くはないですが、ああ、なんで自分はこんなことをしているのだろう?これが憧れていたデザイナーなのかぁ〜。すごいクリエイティブだぁ。とかぐるぐる考えながら作業していると、若干トリップしてきます。
(作業内容そのものは退屈で単調なケースが多いので、トリップに拍車をかけます)そして、トリップしているうちに楽しくなってくるのです。
楽しく昆孫してる方々にはすみません
あくまで筆者の経験のみなので、個人的には6次請けくらいまでくると異常(というか4次受けくらいですでに駄目な気もしますが)な案件と考えてしまいますが、どこかには、正常な進行で昆孫まで使っている案件もあるのかもしれません。もし楽しく健やかに昆孫請けをしている方々がおられたら、悪口を言っているみたいで申し訳ないです。
申し訳ないですが、やっぱり異常じゃないのかなぁ。
どうなんですかね?
最後に筆者ならではの問題提起
丸投げやめません?
普通のことですが、丸投げするのやめません?
クライアント含め、誰も幸福になっていないと思います。
金や時間や関係者の心が無駄に消費されているのはもちろんですが、結局は本当の本当の本当に大事な、クライアントのクライアント。
つまり、アイスの例で言うとアイスを買ってくれる最終消費者にとって、びっくりするほど、途方もなく、壊滅的に、無慈悲に、意味がない行為です。
子孫請けも、できれば孫くらいにしといた方がいいと思います。そして、一次請けの会社様も、無理やり何でも請けないようにして欲しいし、クライアント様も、可能な限り実際に動いている玄孫くらいの会社に直接依頼してくれれば、安いし品質もいいのに…
とは思いますが、とりあえずは最低限「丸投げはよくない」だけ。
の問題提起でした。
丸投げに関しては、弁護の余地なく悪!!
というのが筆者の経験をもとにした意見です。
最後に伝えなきゃいけないこと
ここまで読んでくださった方々。本当にありがとうございます。
そして、これだけは最後に伝えないといけません。
今まで書いたことを信じるか信じないかはあなた次第です。
いかにも本当に体験したことがある感じに書いていますし、筆者自身もそんな気がしていますが、多分全部嘘じゃないかな。
特に悪口とか問題提起っぽい所は全部嘘かもしれないですよね。
とにかく、あくまで物事の側面を一方向からだけ見た話でしたので、
完全に信用しない方がいいと思います。
もしかしたら、丸投げには丸投げの利点や何かの事情があるのかもしれないですしね。
ただ、願わくばこれをきっかけに少しだけでも「なんかやばいことあるのかも」くらいの意識の変化が皆様の中にあれば、
それで十分です!!