「共感されない」企画書の作り方

ツナグマデザイン(以下筆者)の知識を晒そうと思います。 今回は企画書の作り方の手法を一つ提案します。 役に立ちそうで役に立たない、少し役に立つ。くらいでしょう。
とはいえ、個人的には結構いい手法だと思っているので、企画書作成に困っている若手社員や、その教育役の方とかに届くと嬉しいな。と思っています。

1 自己紹介

はっきりさせますが、筆者は企画書のプロです。
本当です。
企画書とかプレゼンに関しては、社員時代から企業向けにワークショップを開催してますし、大学でも話したりもしますので、本当に本当です。
不思議なもので、「本当です」っていっぱい書くと嘘っぽいですね。
でもこれはさすがに嘘ではなくて、企画書がないと仕事を受注でき無かったりしますからね。 でもそんなに大事なものですが、企画術や企画書指南って、少しググったりAIに聞くだけでも大量のやり方が無数に出てきますよね。
いったい何が正しいのか?と思っちゃうのでしょうが、 おそらくは、「正しいのも間違っているのも無数にある」
というのが実情だと思います。 今からご紹介するツナグマデザイン流もその中の一つであり、参考。
くらいに捉えてくださいませ。

2 まず、共感されないことを言え

まず、共感されないことを言え
ほぼこれだけがコツなのですが、意味不明だと思うので順を追って書きますね。

3 共感されないとは?

企画書には「説得」と「説明」があるとします。他にも分け方はあるのでしょうがともかく、この記事で扱うのは「説得」の方です。

相手は話を聞く気がない

説明との大きな違いは、説得するべき相手が「そもそも話を聞く気がない」というところです。
だからこそ説得が必要なわけで、基本的にはこっちが一生懸命喋っていても向こうは「早く終われ」としか思っていません。
極論かもしれませんが、「そういう前提に立って考えないと駄目」という点は理解していただけるのではないでしょうか?
(ちなみに、筆者は駆け出しの頃に「早く終われ長い」とクライアントに実際に言われたこともあります。泣きました)
だって、話を聞いてくれる前提の相手に説得するのって、別に難しくないですよね?どっちかというと、そっちは説明のテクニックが必要になります。ググってより多く出てくる方のやつです。

順番逆です

今回は説得についての記事なので、「説明の説明」は少しにしますが、

  1. 前提条件や現状説明
  2. 問題提起
  3. 問題の解決策
  4. 解決先の具体例

多分こんな順番のやつが説明の企画書の順番(台割りとかアウトラインとかとも言う)です。
まぁ、普通ですね。細かい違いはあれどよくあるやつです。
そして、説得はこのです。

最初に興味を惹けないともう終わり

もうお分かりだと思いますが、聞く気がない相手は「前提条件や現状説明」に興味がないので、興味のないものへの問題提起とか解決策とかにも当然興味が全くありません。最初から興味がないから興味がないのです。
ということで、この興味ない地獄を回避するには「最初に興味強制をぶつける」しかないのです。

興味の正体は想定外

自分の想像しそうなことや考えられること、要するに「想定内」を言われても、人間は興味を持ちません。
例えば、友達に「毎食バターを3箱食べると太るんだぜ!知ってた?」と言われてもそれは想定内ですので、コミュニケーションにはなりますが、バター大食いに興味は持ちません。
しかし、「毎食バターを3箱食べると、胃腸が過労状態になってカロリーを消費するから逆に痩せるらしいよ!知ってた?」と言われたら、少しバター大食いに興味を持ちませんか?持った場合は、それは「想定外」の話だったからです。
ちなみに、この例は嘘なので間に受けないでくださいね。
バター美味しいですけど。

まず、相手の想像を超える

想定外を言うには、先に相手の想定内を知らなければいけないので、想像力を巡らせて、相手のことをじっくり考えましょう。相手が何を常識としているのか、何を退屈と思っているか、相手の思考力はどの程度か、何を重要視しそうか etc…
そして、その想像の中の相手の想像を超えられるものを考えましょう。
それを企画書の最初に書きましょう。
何より、絶対にこれを言われないようにしましょう。
自分もそう考えていたんだ
出た!!アイデアを出す人間として一番言われたくないやつ。
共感されたら終わりです。
なぜなら、共感は想定内の相手にしかしない行為なのですから。
共感された時点で、あなたは相手にとって無価値なのです。

説得の順番

まず説得と言いましたが、本当の本当の最初には「自己紹介」が入ります。

  1. 自己紹介
  2. 相手の想像を超えたもの
  3. 論理的な説明
  4. 論理的な説明の具体例やモックアップ

これが説得の順番です。
なぜ自己紹介が最初に必要なのか気になるかもしれませんが、
その理由は「2. 相手の想像を超えたもの」の効果を得るためです。
実は、自己紹介がないと説得は成立しないのです。
(有名だとか既知の間柄であるとか、自己紹介が省ける状況の場合は例外です)
どういうことか分かりやすくするために、この記事の最初にある筆者の自己紹介をこう変えてみましょう。

自己紹介

はじめまして。つなぐまです。普段は鮒の養殖をしていますが、孫の世話がない日は趣味で色々とデザインをしています。今日は、ユーチューブで勉強した「デザイナーが教える猿でもすごい企画書が簡単に作れる方法」をご紹介します。

どうでしょうか?
どうもこうもないかもしれませんが、自己紹介をちゃんとしないと、後続の内容の文脈が変わってきてしまうのですね。
そうすると「超えたもの」の力が無くなってしまうので、最初には自己紹介をするのが良いということなのです。

超えたものの後は論理

無事に「超えたもの」で相手の興味を惹けた場合、相手は「どういうこと?」と思う状態になっています。
「どういうこと?説明してよ!」の前のめり状態。
この前のめりに対しては、可能な限り筋道だった答えが求められます。この答えが腑に落ちれば、説得完遂までもう一歩です。逆に外せば当然終わりです。しかし、元々のアイデアを論理的に説明するだけですから、基本的なやり方は説明と同じで、そこまで難しくはありません。このパートに関しては、説明に関する他の企画書術を参考にしてもいいかもしれません。

実験してもいいかも

全く同じ内容の「論理的な説明」を用意して、「超えたもの」の言い方だけ変えて実験するのも面白いのでオススメです。筆者の会社員時代は、負けたくないコンペの時には、部下や上司を使って何が超えるかを、よく仮想プレゼンで実験していました。
この時の実験で、**「最初に論理的な説明をすると一番効果が弱い」**ことが判明したので、その際の経験則もこの記事には加味しています。
(再現性あるか不明ですが)

論理の後には目に見せる

案件や説得したいものによっては不要かもしれませんが「論理的な説明」の後に追い討ちで「論理的な説明の具体例やモックアップ」を見せるとベターです。ビジュアルデザインの案件だったら見てわかるモックアップとか、企画案だったら実際のタグラインいくつかとか。とにかく何でもいいので、分かりやすく論理の正しさを裏付ける何かを提示出来て、それを外さなければだいたいの説得は勝ちと言えるでしょう。

大事なことなのでもう一度書きます

  1. 自己紹介
  2. 相手の想像を超えたもの
  3. 論理的な説明
  4. 論理的な説明の具体例やモックアップ

こういう構成にしてください。
きっと説得できます。

4 具体例

色々書きましたが、なかなか想像できないと思うので、ここで例を使って説明してみましょう。説得の仕方の説明ですね。
あり得なくて誰も興味のない話題の方が例としてふさわしいので
あなたはいますぐ角刈りにするべきだ(ジェンダー問わず)
の説得企画書としましょう。
この後からは、実際の企画書のアウトラインだと思って読んでみてください。読んだらあなたも角刈りにしたくなるかも!?

まずは普通の企画書から

比較対象として、まずは普通の企画書。
いわゆる説明企画書の形式でのアウトラインを提示します。

タイトル:角刈りについての提案書

  1. 当企画の概要
  2. 髪型とは何か?
  3. 現状のあなたの髪型の分類
  4. あなたの現状の髪型のpros
  5. あなたの現状の髪型のcons
  6. あなたが本来髪型で得るべきものとは
  7. あなたの髪型がおかしい理由
  8. 角刈りという髪型についての説明
  9. 角刈りのpros
  10. 角刈りのcons
  11. 現状の髪型と角刈りの比較表
  12. 角刈りを提案します
  13. 私は角刈りにするプロです
  14. 角刈りを失敗しません
  15. 他社さんもこんなに角刈りにしています
  16. 角刈りのお見積もり
  17. 角刈りのスケジュール
  18. 角刈りに使う技術の説明
  19. 実績も多いので信頼できます
  20. さらに、今はキャンペーン中です
  21. 安心して角刈りにしてください

以上。
こんな感じでしょうかね?
いわゆるセールスっぽいパワポとかでよくある形式ですね。
読者の中には、見慣れている方もいらっしゃるかもしれません。
個人的にはうんざりする形式なんですけど、好きな人がいるんでしょうね。好きな人が多いから主流なんでしょうね。

次に、説得企画書

本題の説得企画書のアウトラインです。
先ほどの説明企画書の場合とは説得される側として心の動き方がどう違うのか、感じていただければと思います。

タイトル:角刈りについての提案書

1 自己紹介:私は医療の専門家です
2 超えたもの:角刈りで癌を防げます
3 論理的な説明:癌の発生率と、髪型への悩みに相関関係が見られました。
→癌のリスクにおいて、精神的ストレスは無視できません。
そして、髪型を考える/整えることに、無自覚で強烈なストレスを感じている人々が少なくないことが判明しました。
そのため、髪型のことを一切考えずに頭皮を清潔に保てて、さらに坊主と違い頭の形状にも審美性が左右されない角刈りが、癌予防の上ではベストという結果が出ました。

4 論理的な説明の具体例やモックアップ:
 たまに角刈りのお婆さんがいますが、調査した結果大抵長生きでした。

比べてみてどうでしたか?

違いを強調するために、つい嘘をついちゃいました。嘘ですからね!癌は治りませんからね。
(昔、この内容のワークショップやったら本当に信じちゃった人がちらほらいたんですよね…)
嘘はよくないので、本番では嘘にはならないようにするとしても、「説得される側」の気分としては、かなりの違いが感じられたのではないでしょうか?どうだろう?違いを感じてくれてたら嬉しいです。

最後にネタバレ?

この説得方法は、特にデザイナーには相性が良いやり方だと思うので、気に入ったらご活用ください。筆者は会社員時代にこの方法を編み出してからは、コンペや自主提案にめちゃくちゃ勝てるようになりました。もちろん人や状況によって向き不向きはあるとは思いますが、少なくとも行き詰まった時に試す価値くらいはある方法だと思います。
そしてネタバレというかあれですが、実はこの記事自体もこの説得方法を使っていました
気付きましたか?バレバレだったら恥ずかしいのですが…

1 自己紹介:企画書上手だよ云々
2 相手の想像を超えたもの:まず、共感されないことを言え
3 論理的な説明 : 共感されないとは?
4 論理的な説明の具体例やモックアップ : 角刈り説得

という構成でした。
ここまで読んでしまった方は、「それこそが成功している証拠」だと思うので。非常に嬉しいです。是非是非お試しくださいませ。
もし、もっと詳しいやり方の説明が必要な方がいらしたら、それはまた別記事にしようかなと思っていたり、本当はワークショップ等もやりたいので、もし需要ありましたらコメントは多分敷居高いので、テレパシーでいいので伝えてください。多分受けとります。
というわけで、読んでいただきありがとうございました。
(テレパシーでも感謝の念送っときますね)