もうデザインしないデザイナーに仕事を頼むのはやめませんか?

「デザイナーは見た目を作る人」という誤解

最近は減ってはきましたが、それでもまだ、デザイナーを「綺麗なものを作るだけの人」だと思っている人も多いです。

そもそもですが、日本においてのデザインという用語には多義性があることが一般的に認められています。
それは、正確性はともかく「設計」と「意匠」と言っていいと思います。
簡単にいうと、建築とかITシステムをきちんと機能させるのが設計という意味でのデザインだし、洋服やロゴとかを美しくするのは意匠という意味でのデザインということです。
どちらもデザインだし、ジャンルに関わらず設計と意匠は多くの場合はセットで考えるものなので、分けられるものでもないのですが、
何故か、多くの人は意匠側だけしか気にしていないように思えます。
ちなみに、あくまで主観ですが、欧米圏だと、Designという用語は設計の意図の方が大きく、意匠のことを言う場合にはArtという用語を使っているケースが多く思えます。
(設計と意匠の話は「ツナグマデザインを知ってください(発注。その前に)」でも書いているので、よかったらそちらもどうぞ)

設計を大事にしませんか?

いきなりですが、昔話をさせてください。筆者が三社目の会社にいたとき、大きめの企業で、結構偉い人の担当になったことがあります。経緯としては、前任者が3人くらい立て続けに撃沈したので、器用そうだという理由で部署違いの筆者が抜擢されました。

で、実際に担当してみてすぐにわかったのですが、
偉い人が相手だと「意匠の話」だけしても、何も提案が通りません。
色がどうとか、写真の使い方がどうとか、いくら綺麗なものを持っていっても、
決裁する側は「で、それで何が良くなるの?」としか思っていないわけです。
前任者たちが立て続けに撃沈したのも、まさにこれが理由でした。
そこで筆者は、意匠を見せる前に、
「この意匠が、顧客にどういう影響を与えるのか」という因果を説明するようにしました。
すると、提案が通るようになりました。

意匠はもちろん大事です。
でも、その前段の設計のほうがもっと大事だった、ということです。

この記事での「デザインしないデザイナー」とは、そういう「見た目の話だけをして、その見た目で誰に何が起きるのかを話さないデザイナー」のことです。意匠の腕が悪いかどうかとは別軸で、見た目の向こうにいる人の話をしていない、ということです。

設計だけでは、まだ半分

じゃあ設計が得意な人にデザインを頼めばいいのか、というと、話はそう単純でもないです。

まず、設計がどういうものか、例を出しますね。
あるシステム開発会社から、企業理念(クレドみたいなもの)を整理したい、という依頼がありました。
自由気ままなエンジニアさんたちの、仕事のクオリティを底上げしたい、という狙いです。
先方が用意してくれたたたき台は、「エンジニアはこうあれ」的な、理想論と精神論のかたまりでした。
筆者はそれを、完全に否定しました。

代わりに出したのが、
「やらなくていいことを、やらなくていいと許可する」という方向です。例えば「早くPRを出してくれるなら、自分で完璧にチェックしなくていい」みたいなやつです。もちろん、その分コードレビューの効率化もセットです。「怒られる」「否定される」が怖くて手が遅くなっていたのなら、その怖さを取ってあげれば手は速くなる、という狙いです。理想を足すんじゃなくて、人間のダメさを前提に入れて組み直す。

この仕事は、見た目とは一切関係ありません。
でも、先方が予想していなかった方向から課題を組み直しているので、これも立派な設計です。
(公開済みの記事で「設計とは相手の裏をかくこと」と書きましたが、まさにそれです)

ただ、ここまでならコンサルでもやれる人はいるでしょう。

でもコンサルの仕事は、基本的には提言するところまでです。形にするのは、また別の人の仕事になります。設計だけをして、意匠はしない、という分担です。(デザインしないデザイナーの、ちょうど逆です)

設計の答えとしての意匠

ある学校法人のサイトは、親に向けて作られていました。
筆者はまず、「親向け」ではなく
「中学生が見て、かっこいい、ここに入りたいと思うサイトにすべき」と課題を定義し直しました。

そして受注前の商談の段階で、ほぼ完成形のカンプを見せました。それで受注が決まりました。

ここで大事なのは、かっこよさ(意匠)が、「中学生にあこがれてもらう」という設計上の目的から決まっているところです。つまり、設計があるから意匠が効くわけです。

誰のためのデザインか

ということで、デザイナーと話すときは、最初に何の話をしてくるか?を見てみてください。デザインするデザイナーは、見た目の話より先に、あなたの顧客の話をします。色や形の話しかしないなら、その人はデザインしないデザイナーかもしれません。