フィニッシング
フィニッシングフェーズでは、成果物を最終確認し、クライアントへ納品し、契約上のクロージングまでを行います。
1 成果物の最終確認
最新のOUTの定義と照合する
フィニッシングフェーズの最初の作業は、現時点の成果物が、定義したOUTを満たしているかを照合することです。オブジェクト指向プロジェクト設計でいえば、プロジェクト全体という一番大きなオブジェクトのOUTを確かめる作業です。
照合の基準は、進行中に生まれた感覚や、メンバーから上がってきた完成度の自己申告ではありません。OUTの定義そのものです。工程内企画で中身が決まったときや、途中で要件が変わったときは、クライアントと合意した時点で定義が更新されているはずなので、最新の定義を基準にします。定義が更新されていないのに「実態として変わった」と感じているだけのものは、定義を黙って実態に合わせません。実態を定義に戻すか、クライアントと合意して定義を更新します。
照合は、PMが自分で行う
進行中のPMの動きと同じく、OUT定義との照合はPMが自分で判断します。担当メンバーに「これで完成ですか」と問い合わせる作業ではありません。OUTの定義はPMが握っているので、PMは、出てきた成果物を定義に当てて、満たしているかどうかを直接判定します。
メンバーに確認すべきは、定義との差分があった場合に、それが修正可能な範囲のものか、設計の見直しが必要な性質のものか、という点だけです。
差分があった場合は、進行中の異常と同じように扱う
照合の結果、定義と差分があった場合は、「OUTが違う」という型の異常として扱います。対処は、進行中のPMの動きと同じく、バッファで吸収する、部分的再設計、全体的再設計の順に考えます。
フィニッシングで全体的再設計が必要になることは、多くありません。必要になったときは、事前準備フェーズの設計に誤りがなかったかを、事後処理の振り返りで確かめます。
2 クライアントへの納品と検収
納品の形式と範囲を確認する
納品は、契約書または合意文書で定めた形式と範囲に沿って行います。納品物の一覧、納品方法、納品先、納品期日は事前に決まっているはずなので、決まったとおりに引き渡します。
ここで注意するのは、契約書に書かれていない付随物の扱いです。作業過程で生じた中間生成物、作業ファイル、参考資料などをどこまで渡すかは、契約書だけでは判断できないことがあります。判断に迷う場合は、渡す前にクライアントに確認します。
検収を依頼し、合意を得る
納品後、クライアントに検収を依頼します。検収はクライアント側の作業ですが、PMは検収が滞りなく進むように働きかけます。検収基準が事前に明確になっていれば、検収はスムーズに進みます。
検収で指摘事項が出た場合は、それが契約範囲内の対応なのか、追加対応なのかを切り分けます。範囲内であれば対応し、範囲外であれば追加対応として扱うかを別途協議します。範囲内か範囲外かの基準も、要求定義と契約の段階で決まっているはずです。
検収完了をもって、納品プロセスを閉じる
クライアントから検収完了の合意が得られた時点で、納品プロセスは閉じます。合意の形式は契約に依りますが、口頭ではなく文書または記録に残る形で取り付けます。後の請求処理や、将来の認識齟齬の防止のために必要です。
3 契約上のクロージング
契約上の残タスクを洗い出す
検収が完了しても、契約上の義務が残っている場合があります。たとえば、保証期間中の対応義務、納品後の一定期間の問い合わせ対応、ドキュメント類の追加提出などです。残っている義務を契約書に立ち返って洗い出し、何が残っていて何が完了しているかを整理します。
未消化要件があれば、扱いを確定させる
進行中に処理しきれず、フィニッシングまで持ち越された要件が残っている場合があります。持ち越された要件は、次のいずれかに振り分けます。
- このプロジェクト内で対応する
- 追加プロジェクトまたは別契約として切り出す
- クライアントと合意のうえで対応しないものとして閉じる
どれを選ぶにしても、口頭の感触ではなく文書での合意を残します。曖昧なまま事後処理フェーズに持ち越すと、後から認識齟齬として再燃します。
プロジェクトの終了をクライアントと合意する
納品と検収が完了し、残タスクと未消化要件の扱いが確定した段階で、プロジェクトの終了をクライアントと合意します。終了の合意が契約上のクロージングで、合意が取れた時点でフィニッシングフェーズは完了し、事後処理フェーズに移ります。