進行中のPMの動き
プロジェクトが走り始めた後、PMは何をどう判断し、どう動くのかを整理します。
進行中のPMは、INとOUTだけを確かめる
PMは、事前準備フェーズの工程設計で、各オブジェクトのINとOUTを定義しています。進行中のPMの仕事の中心は、定義どおりに各オブジェクトが動いているかを確かめることです。中身に踏み込まず、INとOUTの境界だけを見るのが基本姿勢です。
PMはオブジェクトの中身を把握できず、把握しようとした瞬間にボトルネックになります。一方で、PMはINとOUTの設計者なので、境界については誰よりも理解しています。だから、進行中のPMが見るのはINとOUTだけで足ります。
異常が無いあいだは、PMが自分でOUTを評価する
評価のために、オブジェクトに問い合わせはしません。PMはINとOUTの定義を握っている張本人なので、出てきたOUTが定義どおりかどうかを判断するのに、担当者への確認は必要ありません。問い合わせをするのは、自分で評価した結果として何かおかしいと判断した、つまり異常を検知した瞬間からです。
OUTのタイミングも同じです。各オブジェクトのOUTがいつ出てくるべきかは、工程設計の段階でPMが決めています。定めたタイミングでOUTが出てこないことも、PMが自分で検知できます。
異常が無いあいだ、PMの動きは自己評価の繰り返しに尽きます。
異常は、PMから見えた形で四つに分ける
異常を検知したら、PMはまず原因を確かめます。ただし、異常の型は、原因ではなく、PMから見えた形で分けます。原因が外部の事情でも、PMから見えるのがOUTのずれなら、「OUTが違う」として扱います。
A OUTが違う
OUTは出てきたが、定義と違う場合です。量、質、いずれの観点でも該当します。原因を把握するために、担当オブジェクトに問い合わせます。
B OUTがない
OUTが定義したタイミングで出てこない場合です。担当者の途中離脱、長期欠席、連絡不通など、原因はさまざまですが、観測上はOUTそのものが存在しないという事態に集約されます。メンバーの私的事情による途中離脱の通告も、この型に含まれます。
C クライアントからの制約条件などの変更
クライアント側の都合で、要求、納期、予算といった制約条件が変更される場合です。制約条件の変更は異常ではなく、外部からの正当な変更要求ですが、工程設計の前提が動くという点で、進行中のPMは異常と同じように扱います。
D 設計そのものの間違いが判明
事前準備フェーズの工程設計に間違いがあったことが、進行中に判明する場合です。見積もりの読み違い、INとOUTの定義の不備、想定していなかった作業の発見などが該当します。市場や技術環境の急変による要求の陳腐化も、設計時の前提が崩れたという意味で、この型に含めます。
対処は、バッファ、部分的再設計、全体的再設計の順に考える
異常への対処は、次の順に考えます。前の段で収まれば、次の段には進みません。
1 バッファで吸収する
計画的バッファか、すでに生まれている偶発的バッファを使って、フェーズの中で吸収します。計画的バッファは、下振れを吸収するために予算設計で確保した備えです。
2 部分的再設計
バッファで吸収しきれず、フェーズの骨格、つまりクライアントに対するマイルストンの並びを変えずに済むときは、部分的再設計に進みます。対象になるのは、特定のオブジェクトのINやOUTの再定義、担当オブジェクトの差し替え、フェーズ内の工数の再配分などです。
3 全体的再設計
フェーズの骨格を変えないと収まらないときは、全体的再設計に進みます。最終OUTや制約条件そのものが動いた場合です。工程設計の手順を最初からやり直すことになり、フェーズの分割、各フェーズのOUTの再定義、工数の再配分、スケジュールの引き直しまでが射程に入ります。
型と、進む段の関係
AとBは個別のオブジェクトの中で起きるので、部分的再設計までで収まることが多く、CとDは工程設計のスタート地点が動くので、全体的再設計になることが多いです。ただし、どこまで進むかは、型ではなく、フェーズの骨格を変える必要があるかどうかで、PMが決めます。
Cは、バッファで吸収しないのが基本です。計画的バッファは下振れへの備えで、クライアントの都合による変更に使うと、利益率を下げることになるからです。Cでは、変更の大きさに応じて部分的再設計か全体的再設計に進み、必要なら納期や金額を交渉し直します。
判断するのはPM
部分的再設計か全体的再設計かを問わず、再設計に入るかどうかを判断するのはPMです。PMがINとOUTの設計者であり制御者である以上、再設計の判断もPMの責任範囲です。再設計には、クライアントとの交渉が伴うこともあります。特に全体的再設計では、納期や金額の再交渉を伴うことが多くなります。