チーム設計

工程設計を踏まえ、どのようなチームでプロジェクトを進めるかを設計する作業を扱います。

メンバーの能力は、プロジェクト中に変わらない

やる気を引き出してパフォーマンスを伸ばすという発想は、PM術のチーム設計の主軸には置きません。

能力が変わらないという前提から、二つの帰結が導かれます。

一つは、事前準備の段階で具体的な個人を当てる必要があるということです。能力が固定で代替も効きにくい以上、ロールや人数といった抽象的な編成だけでは、チームが実際にどれだけのアウトプットを返すかを見積もれません。事前準備の段階で具体的な個人を当て、当てた編成で利益が出る形で成立するかを判定します。成立しなければ、工程や企画を調整するか、商談を組み直すか、受注を断るかのいずれかに進みます。

もう一つは、人選そのものを慎重に行うことが合理的になるということです。能力が固定である以上、走り出してから能力面で挽回することはできません。だからこそ、誰を入れるかを、見積もりと除外の二つの判断で丁寧に決めます。

メンバーを、INとOUTを持つオブジェクトとして見積もる

各メンバーが、INに対してどんなOUTをどの水準で返すかを見積もります。見積もりを工程設計と突き合わせ、各オブジェクトを連鎖させた集合として、全体の要求が実現できるかを判定します。

オブジェクトとして扱うという原理そのものはオブジェクト指向プロジェクト設計で扱っています。チーム設計では、原理を、メンバーという特殊なオブジェクトに当てはめます。

なお、工程設計とチーム設計は完全には独立しません。工程設計の段階で各オブジェクトの工数や担当の見当をつけ、チーム設計の段階で担当に具体的な個人を当ててOUTを見積もり、見積もりの結果を受けて必要なら工程設計に戻る、という往復関係になります。事前準備フェーズの中で、両者を行き来しながら全体の成立を判定するのが実態です。

見積もりは、悪く転んでも返ってくる水準で取る

各メンバーについて、INに対してどんなOUTを返すかを過去の実績から見積もります。実績が蓄積されている人ほど誤差が小さく、設計したプロジェクトの成立確率が高まります。

PMが普段から仕事をしている、よく知っているメンバープールから選べるかどうかで、見積もりの扱い方が変わります。

よく知っているメンバープールから選べる場合

各メンバーの過去の実績がそのまま見積もりになります。INに対してどのレベルのOUTが返ってくるかが、誤差の小さい範囲で見えています。よって判断は、各人がOUTのクオリティと所要時間で下限を満たすかの確認と、選んだ編成で全体の要求が実現できるかの組み合わせ判定に集中できます。

ミニマックスの観点からは、見積もりには最悪ケースの値、つまり「少なくともこのくらいは返ってくる」という水準を採ります。上振れの可能性は計算に入れません。

よく知らないメンバーを入れざるを得ない場合

過去の実績が手元にないため、平均的なモデルを当てて見積もることになります。当然、誤差は大きくなります。

誤差は、ミニマックスの観点から保守的に扱います。平均的なモデルから出した値をそのまま使うのではなく、誤差の幅の下側を見積もりとして扱います。「平均的にはこのくらい返ってくるはず」ではなく、「悪く転んでもこのくらいは返ってくるだろう」という水準で見積もる、ということです。

下側で取った見積もりで全体の要求が実現できると判定できれば成立します。実現できなければ、よく知っている人を当て直すか、工程や企画を調整するか、商談を組み直すか、受注を断るかのいずれかに進みます。

見積もりを満たしていても、入れない人がいる

除外は、見積もりとは別の論理階層の判断で、見積もりとは独立に行います。

代表的なのは、本人のOUT自体は合格ラインに乗っていても、他のメンバーのINやOUTに悪影響を及ぼすことで、編成全体のOUTを引き下げるケースです。編成全体のOUTが下がることは、ミニマックスの観点から無視できません。

問題になるのは、設計外のOUTを勝手に出すことです。提案や意見そのものを否定するわけではありません。提案や意見も、事前にIN・OUTとして設計の対象に含まれていれば正常なOUTです。

エンジニアの場合、たとえば次のようなケースが該当します。

  • レビューで他人のコードに対し、設計されていないOUTを過度に投げ込む人。本人のコードは水準を満たしていても、他のメンバーの作業を萎縮させ、チーム全体の進行速度を引き下げます。
  • 設計外の場でアーキテクチャ批判や方針論を持ち出す人。判断のフェーズはすでに終わっているため、議論を蒸し返すこと自体が他のメンバーのINを乱します。

デザイナーの場合、たとえば次のようなケースが該当します。

  • 他のクリエイターの仕事に対し、設計されていない講評や美意識のOUTを投げ込む人。場の空気を毀損し、編成全体のアウトプットを引き下げます。
  • 自分の領域外のビジュアル判断にまでOUTを伸ばす人。担当オブジェクトの境界を越えるため、隣接オブジェクトのOUTが不安定になります。

いずれの例も、本人の能力単体を見ているうちは合格ラインに乗って見えるという点が共通しています。だからこそ、見積もりの判定とは別に、除外の判断を独立に立てる必要があります。